〔内規 第4号〕
平成19年3月1日
付則: 音楽療法士(専修、1種、2種)として必要な専門的能力(指針)
―本協議会が目指す音楽療法士像(音楽療法士の専門性)―
(JECMT PROFESSIONAL COMPETENCIES)
全国音楽療法士養成協議会
音楽療法・音楽教育充実向上委員会
 本協議会の認定称号(音楽療法士専修・1種・2種)を取得した者が、音楽療法士として、医療施設・社会福祉施設等において、音楽療法を行う場合に必要とされる知識・技能を「音楽療法士(専修、1種、2種)の専門的能力(Professional Competencies)の指針」として、以下の通り示すこととした。
 音楽療法は、幼児・児童、青少年、中・高齢者などの世代別、また、心身の障害別や健康状態によって異なってくるが、本専門的能力は、本協議会認定の音楽療法士(専修、1種、2種)として最低限、身に付けておく必要がある知識及び音楽療法を行う上での手順等を、本協議会が目指す音楽療法士像(音楽療法士の専門性)として参考までに掲げた。
 各養成校においては、この音楽療法士像(音楽療法士の専門性)をご参照いただき、別記、「音楽療法士(専修、1種、2種)教育課程のガイドライン(技能水準目標)」をご留意下さり、更なる音楽療法士養成の向上・充実に努めていただきたい。
I、音楽療法士としての基礎知識
(1)  障がいの特質について基本的な理解を持つと共に、障がいを持つ人に対する音楽療法について認識すること。
(2)  主なる障がいの原因に関する知識、診断・分類の際に使われる専門用語について理解できること。
(3)  人間の機能や発達について、身体的、生理的、精神的、心理的、社会的な見地から、正常とそうでない場合の違いについて理解すること。
(4)  音楽療法士自身の感情や姿勢・行動が、クライエントと療法のプロセスに与える影響 を認識して、療法に有効な人間関係を構築し、かつ良好な人間関係を維持することができること。
(5)  クライエントの人権保護・個人情報保護に関する法律・規則等を周知して、遵守できること。
II、療法のアセスメント(事前調査・準備)
(1)  クライエントの状態を的確に把握するなど、事前に必要な情報を収集して、記録すること。
(2)  音楽療法のアセスメントや関連データを分析・解釈し、クライエントの療法的ニーズを選択すること。
(3)  クライエントに対して、音楽療法を行う目的と療法後の方向性について、口頭と書面で的確に伝達すること。
III、療法実施計画
(1)  クライエントのアセスメント結果に基づいて、療法目的(長期目標又は短期目標)を 決定すること。
(2)  療法目的(長期目標又は短期目標)に沿って、個人療法か集団療法のどちらが適して いるかを判断すること。
(3)  個人療法又は集団療法かが決定したら、音楽療法の実施計画(案)を作成すること。
(4)  実施計画(案)に基づき、クライエントの療法ニーズを特定すると共に、大よその療 法の頻度と期間を、予め計画しておくこと。
(5)  クライエントに適した音楽を選択し、それに合った楽器や教材を用意すること。
(6)  音楽療法の実施計画(案)について、他の専門領域の専門家と連携・協力して調整す ると共に、それぞれ専門家同志で「療法目標」を認識し合うこと。
IV、療法の実践準備
(1)  効果的な療法を行うための物理的な環境(教材、楽器の配置等)を整えること。
(2)  予め、音楽療法のセッション中に起こりうるアクシデントを想定し、もしアクシデン トが起こった場合、慌てず適切に対処できる準備を整えておくこと。
(3)  他の専門領域の専門家と連携・協力をとりながら、更に有効かつ詳細な「音楽療法プ ログラム」を立案すること。
(4)  クライエントのニーズや状況に応じて、セッションの順序立てや、ペース配分を考えること。
(5)  クライエントの参加を促すため、事前にリラックスできるような環境を整えること。
(6)  療法の実施計画に基づいた音楽療法プログラムを展開する前に、必要に応じてクライ エントまたは家族・スタッフに対して療法の手順及び使用楽器の基本的な説明を解りや すく簡潔に行うこと。また、療法の実施前には、必ず、療法的な言語(合図、指示)の取り決めをしておくこと。
(7)  音楽療法のセッションでは、専攻分野(楽器・歌唱等)の能力を活かすこと。
(8)  音楽療法のセッションで、専攻分野以外の楽器類も利用すること。
(9)  集団または個人における音楽療法のリーダーとしての役割を担うことを認識すること。
(10)  療法のはじめは、クライエントの状況や服薬の影響を考慮して、必要に応じてリラ クゼーションやストレスの軽減のために有効な音楽作品を使うことが望ましい。
V、療法の対象別「体験の提供」
(1)  クライエントの心身の発達(認知的・知的発達を含む)を援助できるような音楽療法体験を提供すること。
(2)  クライエントがより効果的にコミュニケーションをとれるよう援助すること。
(3)  クライエントが社会的交流を促進できるよう音楽療法体験を提供すること。
(4)  クライエントの決断能力を促進することができる音楽療法体験を提供すること。
(5)  クライエントの課題遂行能力を向上させることができる音楽療法体験を提供すること。
(6)  クライエントの情緒的反応を引き出すことができる音楽療法体験を提供すること。
(7)  クライエントの創造的な反応を促すことができる音楽療法体験を提供すること。
(8)  クライエントが視覚的、聴覚的、触覚的な合図を受け取れるように、音楽療法体験を通して「感覚器官」を刺激するようにすること。
(9)  クライエントの音楽行動以外の行動変化を促すような音楽療法体験を提供すること。 (クライエントの対人、場所、時間に対する見当識を改善するような療法的体験を提供することなども含む。)
VI、療法実施後の療法計画の見直し
(1)  クライエントの反応パターンや重要な変化を認識すること。
(2)  クライエントの反応パターンや変化を分析し、療法のアプローチを修正すること。
(3)  その他、必要に応じて療法実施計画を修正すること。
VII、療法実施後の検証・評価
(1)  施設や医療機関の定める指針等に従って、音楽療法実施後、定期的に療法実施計画の 検証をすること。
(2)  音楽療法を行った他領域の専門スタッフと共同による音楽療法の検証・評価を行う会 議を設けること。
(3)  音楽療法の検証・評価に基づき、更に有効な療法方針・方法を立案すること。
VIII、療法の記録
(1)  実施した音楽療法のデータを記録すること。
(2)  クライエントについて、音楽療法のすべての段階における経過を正確に、簡潔かつ客 観的な文章で報告書を作成すること。
(3)  クライエントの改善経過や音楽療法プログラムの方針や治療効果について、クライエ ント本人・家族、療法チームのスタッフ等に口頭で伝達すること。
(4)  当初の療法実施計画に、変更・訂正等があった場合には、必ず記録を訂正すること。
(5)  療法アセスメント・療法計画・療法実施・評価毎のデータを検証し、必要に応じ、 最終的な記録の整理をすること。
参考:
音楽療法士(専修、1種、2種)の音楽的「能力・技能(概要)」
(1)  楽器一般について基本的な知識を持ち、クライエントの音楽ニーズに適した音楽体 験を促進できること。
(2)  既成の曲をクライエントの歌いやすい調に移調して、演奏・歌唱活動についてリード  できること。
(3)  クライエントの機能、音楽的能力に応じて既成の曲をアレンジし、演奏活動を指導 できること。
(4)  民謡、童謡、唱歌、歌謡曲、クラシック等における代表的な曲についての知識とレパートリーを持つこと。 
 音楽療法士としての音楽的能力・技能等の養成については、本協議会の「音楽療法士(専修、1種、2種)養成の教育課程」(ガイドライン)に基づき、各養成校において行う。